インテリアの視覚効果と配色【建築パース制作】

住宅の内観パースを作成する際、リビングやダイニングにどのような家具を配置すればよいのか毎回悩むはずだ。
家具の提案書と共に依頼を受ける場合もあるが稀である。

以前に作成した家具データなどを持ち寄って、なんとなく雰囲気で構成しているというのが多いと思う。

今回の記事では、色彩や家具の配置が及ぼす視覚的効果を解説すると共に、その選び方・配色の仕方を補足して説明していく。
このインテリアコーディネートの基本を理解すれば、なんとなくが根拠をもった選択に変わるはずだ。

目次

1. 内装材の配色とその視覚効果

インテリアを構成する壁・床・天井・建具など、内装材の配色の法則について解説していく。

1-1. 天井明度の視覚効果

物を認識する上で、その物の色が黒いと重く見え、白いと軽く見える。これは明度の差で起こる視覚的効果であり、色相にはあまり関係がない。物が軽くまたは重く見えるこの色の効果は、室内の配色にも多く応用されている。
一般的に、天井の色を明るく、床を暗く、壁は天井と床の中間色にするとその空間は天井が高く広々と見せることができる。

床~壁~天井の順に明るく配色していくと、天井が高く見せることができる。白い壁は実際よりも10cmほど高く見えると言われている。壁と天井は同じ色でもOKだ。

天井を暗い色で配色すると天井が低く見え圧迫感が出てきてしまう。黒い天井は実際よりも20cmほど低く見えると言われている。落ち着いた雰囲気を演出したい場合には天井を暗めにするとよい。

天井高さの視覚効果だけでなく、壁面や天井の一部を暗い色にすると光の反射率が低下し、部屋全体の照度が下がる。

1-2. 膨張・収縮色の視覚効果

明度の違いには膨張と収縮と言う効果もある。白などの明るい色は膨らんで見え、黒などのの暗い色は小さく引き締まって見える。床の明度の違いによって変化する視覚効果を見ていこう。

狭い部屋でもライトブランのような明るい色を床に採用すると、広々と開放的な雰囲気が生み出せる。

床に濃い色をもってくると落ち着いた雰囲気が演出できるが、狭くて暗い印象をあたえてしまう場合がある。

1-3. 柄物クロスの視覚効果

大きな柄の壁紙は手前に迫って見えてしまうので、狭い部屋には小さめの柄がよい。

大きな柄物の壁紙は手前に迫ってくるような錯覚が生まれてしまう。

白っぽい明るめの色で柄の小さな壁紙を選ぶと部屋を広く見せることができる。

壁紙だけでなく、カーテンの選定にも同様の注意を行うとよい。

1-4. ボーダークロスの視覚効果

ボーダーは横長に、縦ストライプは縦長に見せる効果がある。

縦ストライプは高さを強調する効果がある。ただしコントラストが強く線の太いものを採用すると部屋が狭く見えてしまう。

ボーダーは横の広がりが強調されるが、天井が低く見えて圧迫感が出てしまうこともあるので注意が必要。

1-5. 寒色・暖色の後退前進効果

色には手間に迫って見える前進色と、後ろに下がってるように見える後退色がある。基本的に暖色系は前進色、寒色系は後進色にあたる。実際にそれぞれの効果を見ていこう。

奥の壁面を暖色と寒色で色を入れてみている。オレンジの壁面より、ブルーの方が奥行を感じることだろう。
CGパース作成時は、壁面の色は変えられないのでカーテンなどのウィンドウトリートメントの色で調整するとよい。

1-6. 建具や造作材の配色効果

建具や造作家具の色を決める場合、最も一般的なのが床の色に合わせるパターンである。また、床の色よりも一段階濃い色にすると引き締まった印象を与えることができる。日本に多い配色の方法だが、木目の要素が生まれてくる分、主張が強く出てしまい圧迫感が生まれる場合もある。

海外インテリアで建具や窓枠は壁面同色やホワイト系で存在感を強調しない傾向がある。そのため部屋を広く見せることもできる。

2. ダイニングセットの選び方

配置する家具と床の色の関係で、与えられる視覚効果も変化する。特にダイニングセットなどの大きな家具は、部屋を広く見せたり、家具自体を強調したりと見え方も変わる。明るい床と暗い床の2パターンにおいて、床色と似た色のダイニングセット・床色と対照的な色のダイニングセットを配置した場合を見ていこう。

2-1. 明るい床にダイニングセットを配置

明るい床に同色の家具を置くと、空間が広々と見え統一感が生まれる。

明るい床に濃い色の家具を置くと、家具のラインが強調され印象がひきしまる。

2-2. 濃い床にダイニングセットを配置

濃い色の床に明るい家具を置くと、家具が軽く見えてしまうのでボリューム感のあるものや、高級感のあるものにするとよい。

濃い色の床に色の濃い家具を置くと、重厚感があり引き締まった印象が生まれる。

3. ソファの選び方

ソファもダイニングセット同様インテリアに占める割合の多い家具なので、形状や配色など、もたらす効果を把握した上で選択するとよい。

3-1. 背の低いソファを選ぶ

リビングを広く見せるには、背が低いソファを選ぶことが重要。背が高いと圧迫感を与えるため、空間が狭く感じやすくなる。

3-2. 壁紙の色と同じ色のソファを選ぶ

壁の色と同化させることでソファが強調されにくくなり、部屋を広く感じさせられます。日本のインテリアにおいての壁面は白系がほとんどなので、ソファも同系に合わせることで圧迫感を軽減できる。

3-3. 素材の持つ雰囲気も加味

布張りソファは温かみのある優しい肌触りが特徴でどの年代からも好まれる。

本革張りのソファは自然の風合いや高級感が魅力である。

4. 収納家具配置の注意点

配置する家具による視覚的な効果を解説していく。

4-1. 背の高い家具配置の場合、色は床でなく壁合わせ

色の濃い床に、背の高い家具を置くと圧迫感が生まれ空間が狭く感じてしまう。

どうしても背の高い家具を置かなければならない時は、濃い床に色を合わせるのではなく、明るい壁色に合わせると圧迫感も軽減される。

4-2. 床色に合わせ家具を置きたい場合は背を低く

暗い色の床面と同じ色の家具を配置したい場合は、背が低いものにして明るい壁面をできるだけ見せるとよい。

4-3. 高い脚や抜け感のある家具は広さを表現させる

色の濃い家具でも抜け感のあるものを選べば、空間を広く見せる効果が期待できる。

4-4. 遠近法も利用する

背の高い家具を濃い木目で配置しなければならない場合は、手前から奥に向かって低くなるようその他の家具で調整するとよい。目線が奥に集まり、遠近法の効果で広がりが生まれる。

5. カーテンの選び方

建築パース作成時、どうしても家具の配置に労力を注ぎがちであるが、意外と重要なのがカウィンドウトリートメントと呼ばれる窓まわりの製品である。割と大きな面積を占めるので配色に気を付けて選定するべきだ。

5-1. 困ったら白系のコーディネート

コーディネートとして特に意図がない場合は、清潔感があり空間を広くみせる効果のある白やアイボリー、安定感があり飽きのこないベージュなどを選ぶとよい。

5-2. クッションなどの小物と色を合わせる

カーテンとインテリア小物のカラーを合わせると統一感があり落ち着いた雰囲気を演出できる。類似色によるグラデーションなど意識するとより雰囲気が出る。

5-3. ソファやチェアの張地と色を合わせる

部屋のメインカラーとして構成することの多いソファ・チェアの色とカーテンを合わせれば、より統一感のある雰囲気が出来上がる。

6. インテリアの視覚効果と配色まとめ

以上がインテリアの視覚効果と配色の解説である。

ちょっとしたことでも空間の印象を変えてしまうことが理解できただろう。
このような内容を知っているかどうか、意識しているかどうかでCGパースに及ぼす影響も大きい。

特殊な場合を除きインテリアパースは、広々として開放的な空間の表現が求められる。
ひとつひとつではなく、空間全体として考えることも大切である。

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