【3DCGを学ぼう】PBRマテリアルとは?基本概念とフリーサイト紹介

昨今の3DCG技術には欠かせない存在となったPBRマテリアルだが、その概念や使い方について詳しく知る機会は意外にも少ない。PBRとは具体的に何を指し、どのような特徴を持ち、従来のマテリアルと何が異なるのだろうか。

この記事では、PBRマテリアルの効果を最大限引き出すため、構成する主要要素の概念や設定方法を解説する。さらに、PBRマテリアルをフリーで配布しているサイトや、高品質な有料サイトを紹介していく。

本記事を通じ、PBRマテリアルの本質を理解することで、人々を魅了するような作品が作れる基盤を築くことができるだろう。

目次

1. PBRマテリアルとは?

PBRマテリアルとは、「Physically Based Rendering」の略で、物理ベースレンダリングを実現するためのマテリアルのことを指す。現実世界の光の性質を計算に取り入れ、よりリアルなビジュアルを作り出す技術である。主にゲームや映像制作で使用され、その重要性が増している。詳細を見ていこう。

1-1. 物理ベースレンダリング

PBRとは「Physical Based Rendering」の略で、直訳すると物理ベースレンダリングとなる。この手法は、光の挙動を実際の物理法則に従ってシミュレートすることにより、3DCGにおいてよりリアリスティックなビジュアル表現を可能にする。光の反射、吸収、散乱といった現象をより正確に再現するために設計されており、金属や非金属の表面、粗さや光沢といった特性を詳細に表現することができる。

この技術の開発と普及において大きな役割を果たしたのが、アメリカのアニメーション会社ピクサーである。
自社のレンダリングソフトウェアであるRenderManを利用して、PBRを含む先進的なレンダリング技術を映画制作に応用している。また、この技術の進化を業界全体と共有する姿勢も持っており、PBRに関連する理論や技術を公開し、その発展に寄与してきた。

1-2. 従来のものとの違い

従来のシェーディングモデルでは、制作者が直感的に材質の見た目を調整することが多く、その結果は、立ち位置や光源の種類によって大きく変わることがあり、経験値が制作物に大きな影響を与えていた。つまり設定は環境によって毎回変えなければならず、再現性の低い手法であった。

PBRマテリアルを用いたレンダリングを行うようになると、物理的に正確な計算に基づいているので、どのような環境下でも一貫性のある結果を期待できるようになった。この技術により、異なる環境の条件下でも細部までリアルに再現することが可能となり、映画やゲームなどのビジュアル品質向上に大きく貢献することとなった。

2. PBRマテリアルの主要要素

PBRマテリアルを作成する上で、いくつかの主要要素がある。これらの要素を理解し、適切に設定することで、高品質なビジュアルが実現できるマテリアル設定が可能となる。

2-1. Albedo

PBRマテリアルにおけるアルベド(Albedo)は、表面の基本的な色やその表面が光をどれだけ反射するかを示すパラメータである。物理ベースレンダリングでは、リアリズムを追求するために物質の光の反射や吸収の特性を正確にシミュレートすることが重要である。アルベドはこの中で、光源からの光が物質に当たった際にどの程度反射されるか、つまり物質の「反射率」とも言える特性を定義する役割を持つ。

またアルベドは、色彩だけでなく、表面の詳細なテクスチャやパターンも表現するために使用され、マテリアルがどのように見えるかのベースとなる重要な要素である。

難しい解説はここまでとし、具体的な例と共に詳細を解説しよう。

アルベドというのは、撮影した写真から影やハイライトを除いたものをいう。上の画像左側のテクスチャ画像は、上から照らされ凹凸による影が発生しているのがわかるだろう。

このテクスチャが適用されたオブジェクトに対し、下方向からライトが照らされた場合、テクスチャにはあらかじめ影が書き込まれているため、自然現象とは矛盾した方向に影が発生してしまう。このような物理法則と異なる事象が起こらないためにも、影やハイライトを除いたアルベドマップを利用する。

見てわかるようにアルベドマップは平坦なため、通常よりもディプレイスメントを強めにかけたり、アンビエントオクルージョンマップを併用する場合が多い。

2-2. Metalic

PBRマテリアルにおける「メタリック」(Metallic)は、その素材がどれだけ金属的な特性を持つかを示すパラメータである。この値は、マテリアルが金属か非金属かを区別する重要な要因であり、レンダリング時の光の反射や吸収の挙動を大きく変える。

□ Metalicの特徴:

金属(Metallic = 1): 金属の表面は、ほとんどの光を反射し、色をほとんど吸収しないため、高い反射率を持つ。金属マテリアルは、環境からの光を鏡のように反射することが特徴で、この反射は金属の表面色に影響される。例えば、金(Gold)は黄色っぽい反射を、銅(Copper)は赤みがかった反射を示す。

非金属(Metallic = 0): 非金属のマテリアルは、光をより多く吸収し、反射する光は表面の色に基づく。非金属表面は、環境光を散乱させるため、金属ほど鋭い反射はない。

メタリックパラメータは通常、0から1の間の値を取り、中間値を使用することはあまりない。これは、実世界の物質が明確に金属または非金属として分類されるためである。

2-3. Glossiness(Roughness)

PBRマテリアルにおける「Glossiness」(光沢度)は、ラフネスの逆の概念であり、マテリアルの表面がどれだけ光を鏡のように反射するかの滑らかさを示すパラメータである。Glossinessが高いほど、表面は滑らかであり、光を鋭く反射し、鏡面ハイライトがはっきりと現れる。逆に、Glossinessが低い場合、表面は粗く光の反射が拡散してマットな見た目になる。

□ Glossinessの特徴:

・高いGlossiness値: 表面が非常に滑らかで、光を強く鏡のように反射する。これにより、光沢があり、鏡面反射が鮮明に見えるマテリアルが作成される。例えば、磨かれた金属、清潔なガラスなどがこれにあたる。

・低いGlossiness値: 表面の粗さが増し、光の反射が鈍くなる。結果として、表面はマットな質感を持ち、光沢が少なくなる。摩耗した金属、乾燥した土、未加工の木材など。

Glossinessとラフネスは、基本的に同じ表面特性を異なる視点から表すもので、一方が高ければ他方は低くなる。多くのPBRワークフローでは、これらのパラメータのどちらか一方を使用してマテリアルの光沢度または粗さを定義し、両方同時に使用することはない。

2-4. Normal

PBRマテリアルにおける「Normal」は、マテリアルの表面の微細な凹凸をシミュレートするための技術である。ノーマルマップとも称され、表面の各点における法線(表面から垂直に伸びるベクトル)の変化を色情報として格納する。この情報を用いることで、光の反射や陰影の計算に際して、実際には平面である表面に凹凸やテクスチャを持たせるように見せることが可能となる。

□ Normal mapの特徴:

ノーマルマップでは、RGB値を使用して法線の向きをエンコードする。RとGの値は水平方向(X軸とY軸)の傾きを表し、Bの値は垂直方向(Z軸)の傾きを示す。この方法を通じて、実際には平面のポリゴンの表面でも、光の当たる角度により異なる反射や陰影が生じ、よりリアルな表現が可能になる。

ちなみに従来の白黒画像によるBampmapはX軸とY軸のみの表現しかできない。

2-5. Displacement

PBRマテリアルにおける「Displacement」は、オブジェクトの表面の実際の凹凸をシミュレートする技術である。ディスプレースメントマップを使用することで、モデルのポリゴン構造に変更を加え、より詳細な凹凸やテクスチャを実際に表面に追加することができる。これにより、マテリアルのリアリティが大幅に向上し、より高度なビジュアル表現が可能になる。

□ Displacement mapの特徴:

・実際の幾何学的変形の追加: ディスプレースメントは、単に表面の見た目を変えるのではなく、オブジェクトの実際の形状を変更する。このため、非常にリアルな凹凸やテクスチャが表現できる。

・高いリアリズムの実現: ディスプレースメントマップを用いることで、岩石、地面、壁面など、自然界の複雑なテクスチャを高い精度で再現することが可能である。特に、大規模な景観や細かいディテールが重要なシーンにおいて、その効果は顕著である。

ディスプレースメントマップは、グレースケールの画像であり、画像の明るい部分がオブジェクトの表面を押し出し、暗い部分が表面を引き込むように作用する。この技術により、モデルに細かいディテールや複雑な形状を加えることができ、視覚的なリアリズムを飛躍的に向上させることができる。

3. PBRマテリアル配布サイト(フリー)

3DCGの分野では、高品質なPBRマテリアルがプロジェクトの成功に不可欠である。しかし、全てを一から作成するには膨大な時間と労力が必要。そのため、品質の高いマテリアルを無料で配布しているサイトは、多くのクリエイターにとって重宝されている。ここでは、特におすすめの無料PBRマテリアル配布サイトを4つ紹介する。

3-1. Poly heaven

3Dアーティストやデザイナーに向けて、広範囲にわたるテクスチャ、HDRIマップ、および3Dモデルを提供している。すべてのコンテンツはパブリックドメイン(CC0ライセンス)で提供されている。

ライセンスについてはこちらを確認
>>Poly heaven 公式サイト

3-2. ambientCG

リアリスティックな3Dシーンやビジュアルエフェクトを作成する際に必要とされる、高解像度のテクスチャを多数取り揃えている。これらのテクスチャには、自然素材、建築材料、地面、壁、天井など、多岐にわたるカテゴリが含まれている。また、サイトは使いやすさを考慮して設計されており、ユーザーが求めるテクスチャを簡単に見つけられるようになっている。

ライセンスについてはこちらを確認
>>ambientCG 公式サイト

3-3. cgbookcase.com

ユーザーが容易にアクセスしやすいインターフェースと、幅広いカテゴリーにわたるテクスチャの豊富なライブラリで差別化を図っている。あらゆる用途での使用が可能であり、新しいテクスチャが定期的に追加されるため、最新のトレンドやニーズにも応えることができる。

ライセンスについてはこちらを確認
>>cgbookcase.com 公式サイト

3-4. Share Textures



ライセンスについてはこちらを確認
>>Share Textures 公式サイト

4. PBRマテリアル配布サイト(有料)

より高品質なPBRマテリアルが必要な場合はこちらのサイトの登録も検討してみるとよい。

4-1. texture.com

Texture.comは、高品質なPBRマテリアルを豊富に提供するサイトの一つ。このサイトは、プロのアーティストやデザイナーが求める細かいニーズに応えるため、多岐にわたるカテゴリーのテクスチャを揃えている。

無料登録でも低解像度(1k程度)のテクスチャをダウンロードできるが、高品質な作品の制作にはプレミアムの登録が必須である。費用は諸条件によって異なるので、下記リンクより確認しよう。
>>Texture.com価格ページ

PBRマテリアルのダウンロードは左サイドメニューの「3D Scans」と「PBR Materials」より行える。

マテリアル設定については、各自のソフトウェアにテクスチャを読み込んで自分で調整する必要がある。
>>texture.com 公式サイト

4-2. poliigon

高解像度でシームレスなテクスチャを提供している。建築・インテリアCG作成に必要なジャンルは、ほぼ網羅されている。

無料登録でもフリーのマテリアルをダウンロードできるが、数が少ないので有料登録を検討しよう。

費用は諸条件によって異なるので、専用ページにて確認してみるとよい。
>>poliigon価格ページ

そしてこのサイトの最大の特徴は、配布しているPBRマテリアルを利用しているソフトウェア・レンダラーに対応したマテリアルに変換してくれるプラグインがあること。3DSMax・Blender・Maya・Cinema4Dに対応している。

わざわざテクスチャをひとつづつ読み込み、手動でマテリアル設定を行わなくてよく、プラグインにてテクスチャを読み込むだけでマテリアルに変換してくれる。こちらのページで詳細を確認してみよう。

>>poliigon公式ページ

5. 3DCGにおけるテクスチャとマテリアルの違い

テクスチャとマテリアルは、3DCGにおいてモデルに質感や色を与えるために用いられる。この二つは密接に関連しているものの、実際には異なる要素だ。テクスチャは表面の見た目を定義し、マテリアルはその表面が光とどのように相互作用するかを決定する。以下で、それぞれの役割とその違いを解説していく。

5-1. テクスチャとは

テクスチャとは、3DCGにおいてオブジェクトの表面に貼り付けられる画像やパターンのことである。これにより、オブジェクトに色、細かなディテール、表面の質感などを付与することができる。テクスチャは、単純な単色から複雑なパターン、実際の物質を模倣した写真まで、さまざまな形で存在する。

建築CG制作では、コンクリートや木、タイルなどが描かれた2次元画像を利用して、3Dオブジェクトの見た目を表現していくのが一般的な方法だ。そこで使われる画像すべてを総称して、「テクスチャ」と呼ぶ。

5-2. マテリアルとは

マテリアルとは、3DCGにおけるオブジェクトの表面の光の反射や吸収、色の散乱などの物理的特性を定義するための一連のパラメータや設定のことである。マテリアルは、テクスチャだけでなく、光沢度(Glossiness)、透明度(Transparency)、反射率(Reflectivity)、粗さ(Roughness)、金属性(Metalness)など、多様な属性を組み合わせて、オブジェクトが実世界でどのように見えるかをシミュレートする。

マテリアルの設定を通じて、オブジェクトが光をどのように反射し、散乱させるかを決定し、それによってオブジェクトの質感や外観が大きく変わる。例えば、ガラス、金属、石、布など、異なる物質の特性を表現するために、それぞれに適したマテリアル設定が必要となる。

マテリアルはテクスチャを含むことが多いが、テクスチャ単体ではオブジェクトの物理的特性を完全には表現できない。マテリアルはテクスチャを使ってオブジェクトの色やパターンを定義すると同時に、光の反射や透明度などの物理的挙動も制御する。これにより、よりリアルかつ複雑なビジュアル表現が可能になるのである。

5-3. 2つの違い

テクスチャとマテリアルの主な違いは、テクスチャが表面の見た目を、マテリアルがその表面の物理的な特性を定義する点にある。テクスチャは表面に貼り付ける2Dの画像であり、色や模様、細かなディテールを提供することが目的。一方、マテリアルはテクスチャに加えて、そのオブジェクトが光とどのように相互作用するかを決定する。つまり、マテリアルはテクスチャに「生命を吹き込む」役割を担い、3Dモデルをよりリアルに、より具体的に表現するための重要な要素である。

6. まとめ

本記事では、3DCG制作に不可欠なPBRマテリアルに関して、その基本的な概念から具体的な応用方法に至るまで、詳細にわたって解説している。

まずPBRマテリアルの基本情報、次にPBRマテリアルを構成する主要を、さらにCGアーティストが高品質なマテリアルを入手できる無料および有料の配布サイトを紹介している。一読してもらえば、自身のプロジェクトに適したマテリアルを簡単に見つけることができるはずだ。

この記事を通じ、PBRマテリアルの重要性とその応用方法に関する理解を得ることができるだろう。テクスチャとマテリアルの違いを理解することは、よりリアルで詳細なCG作品を制作する上で不可欠である。

この記事が、PBRマテリアルを駆使して高品質な3DCG作品を制作したい全てのアーティストにとって、実用的な情報源となることを期待している。


▼▼テクスチャサイトについてはこちらの記事でまとめている。
>>【建築パース素材】無料で利用できる高品質テクスチャサイト【6選】

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