
1. 準備
いきなり3DCGソフトの方から作業を始めてしまうのでなく、しっかりとした準備を行うことで作業がスムーズに進行する。十分な準備をしていないと立ち戻ってしまうことがよくあるので、面倒がらずに丁寧に対応することをおすすめする。
1-1. 2D図面の用意
より正確に制作を行う必要がある場合は2次元の図面が必須だ。
外観作成時に必要な図面・・・平面図、立面図、配置図。補足的に断面図、外構図or植栽計画図など。
内観作成時の図面・・・平面図(家具配置図)、展開図、天伏図。補足的に配灯図、詳細図など。
これらはできる限り集めておこう。そもそも用意がない場合があるので、想定の中で制作しなければならない。
また図面の精度もばらつきがある為、対応には多くの経験値と深い知識が必要となる。
建築・インテリアの基礎的知識、標準的な納まり、トレンドは常に意識して情報を集めておこう。
1-2. 参考資料を探す
最終的に出来上がるCGパースの理想に近い参考例を探し出そう。制作中は常に意識し、それ以上に仕上げることを目標に行うとよい。
人の認識はとても曖昧で、自分の意識を頼りに視覚化しようとしても修練なしにうまくはいかない。まずは、用意した参考資料をよく観察しながら制作を行うのがよい。
なにも見ないでドラえもんを描こうとしても結構難しい。それができてしまう人は幼いころに何度も繰り返し描いた記憶があるはずだ。これが修練。まだ十分な経験がないうちは、目標とする参考例を探すことを怠るべきではない。
インテリアのCGを制作するのであれば、想定される納まりの確認も含め、インスタグラムやPinterestを利用して参考資料を探そう。
2. モデリング
3DCGソフトに2D図面を読み込んだら、立面図(内観の場合は展開図)をもとにポリゴンモデリングにて制作を行う。最初はおおまかにかたちを構成していき、アングルを調整した後、見える範囲を中心にディテールを追加していくとよいだろう。
住宅外観のモデリングをCinema4D・3dsMax・Blenderを利用して行う方法を解説している。
>>【建築パース】住宅外観モデリングをマスターしよう Cinema4D編
>>【建築パース】住宅外観モデリングをマスターしよう 3dsMax編
>>【建築パース】住宅外観モデリングをマスターしよう Blender編
3Dモデルはすべてを自作する必要はなく、適所で素材集やサイトで手に入るものを利用していく。制作にあてられる時間は限られているはずだ。
>>【建築パース】プロが普段から利用している3Dモデルサイト7選
チェックポイント
□法線は常に見る方向に向かせ揃える
□作ったモデルを今後アセットとして使いまわせるように軸は原点、モデル下部に設定する
□不要な頂点や面は都度最適化して削除しておく
□四角形以上のポリゴンができてしまう部分はなるべくカットを行い整えておく
□近くに見えるだろうオブジェクトについては面取りを行う
早めに仮のライティングを設定しておき、プレビューレンダリングで綺麗な状態を確認できればモチベーションを落とさず作業が進められる。
関連記事
>>【3DCGを学ぼう】 モデリングとはなにか【建築パース制作】
>>【3DCGを学ぼう】モデリングソフトを紹介 【建築パース制作】
3. アングル設定
ある程度モデリングを行ったら、仮でアングルを設定しよう。カメラから見えない箇所を作りこんでも無駄になってしまうので、早いタイミングで最終的な印象を確認することは大切である。まずは真正面から見るアングルを優先して検討しよう。訴求力が高い場合が多い。
□カメラ設定の基本要素
▽カメラの高さ
▽適切な焦点距離
▽遠近効果
▽正面か斜めか
▽三分割法
これらについての解説を行った記事がある。参考にしてほしい。
>>【3DCG】建築パース制作時のアングル決定方法【カメラ設定解説】
チェックポイント
□三分割・十字・黄金螺旋などのガイドを意識して構図を構成する
□垂直のフレームワークを崩してはならない
□最良となるアングルを見つけるために安易な妥協NG
□感覚的にではなく、論理的に決定プロセスを構築していく
4. 仮ライティング
PBRレンダリングを採用している場合、外部についてはHDRIにおける空+太陽光のセットで設定を行う。内観について、以前は室内に入り込む太陽光のハレーション表現が好まれ採用されていたが、最近では空の明かりのみでライティングを行う手法が海外では多く綺麗にレンダリングされる。
インテリアシーンのライティングについてはこちらでも解説している。だいぶシンプルに行っているのがわかるだろう。
>>インテリアパースのカメラ・ライト・レンダリング設定を解説
3DCGのライトの基本はこちらを参考にして欲しい。
>>【建築パース】照明色温度の基本とIESライトを解説【3DCG】
ここでのライティングは仮である。次項のマテリアル設定で表現される材料の色・質感によって空間の印象は変わってくるので、再度設定は行う必要がある。
チェックポイント
□場面に適した色温度を選択する
□IESライト必須
□反射率等の考慮されない為、リアルの設定にとらわれず必要に応じてアレンジしていく
□8割程度の出来を目指した仮の状態で設定を行い、マテリアル設定後に再度調整する
6. マテリアル設定
PBRマテリアルを利用して質感の設定を行う。GPUを利用したインタラクティブレンダリングにて、結果をリアルタイムに反映しながら設定を行うとわかりやすい。外観についてはあまり意識する必要はないが、インテリアにおいては室内のカラースキームを計画してから設定を行うとよい。
マテリアルの設定、PBRについてはこちらの記事で理解を深めておくことをすすめる。
>>【3DCGを学ぼう】PBR・テクスチャとマテリアルの解説【建築パース】
テクスチャについてはこちらの記事で紹介しているサイトからダウンロードできる。
>>【建築パース】無料で利用できる高品質テクスチャサイト【6選】
関連記事
>>CoronaRenderマテリアルの基本 Cinema4Dで建築パース
>>建築パース制作時のフローリング表現 CoronaRenderマテリアル
チェックポイント
□テクスチャは1K以上(1024ピクセル)のものを利用すること
□曲面以外はUV展開をそこまで気にしなくてよい
□できるだけBUMP・DISPLACEMENTチャンネルの設定も行う
□色彩計画などを行って進行するとよい。インテリア色彩の知識は必須である。
7. レンダリング
まずはテストレンダリング(低サンプル数)を行い、細部のチェックを行った後に本番のレンダリングをすること。ノイズを軽減できるデノイザーの利用は必須である。未だCPUレンダリングが主流であり、GPUはチェック用に利用するとよい。
現状、3DCGソフトの標準レンダラーだけでなく、サードパーティと呼ばれる外部のレンダラーを利用することが多い。
制作目的とレンダラーの特徴を把握して選択するべきである。
また、使用用途によってレンダリングする画像のサイズが変わってくる。サイズはレンダリングの時間に影響するので適切な大きさを設定できるようにならないといけない。
>>【建築パース】これで解決!画像解像度と印刷サイズの関係【3DCG】
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>>【3DCGを学ぼう】レンダリングとはなにか【建築パース制作】
>>【3DCGを学ぼう】レンダリングソフト(レンダラー)を紹介【建築パース制作】
チェックポイント
□建築CG用途でのレンダラーはV-rayかCoronaRenderの二択である
□時間を費やす工程となるため、効率的なスケジュール管理が必須となる
□グローなどの効果はレタッチではなく、レンダリング時の設定にて行う
8. ポストプロダクション
建築CGパース制作において、3DCGソフトでレンダリングを行ったら終わりということはほぼない。全体的な色域や明るさを調整したり、人や樹木などを2Dペイントソフトを利用し合成して完成へと向かう。3DCGで表現したほうがよいところ、2Dレタッチで短縮できる箇所など、どちらがよいの判断するには経験が物を言う。効果的・効率的に行えるよう意識して臨もう。
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>>【3DCGを学ぼう】ポストプロダクションとはなにか【建築パース制作】
>>【建築パース素材】プロが徹底解説 切り抜き人物素材とその合成方法
>>【建築パース素材】プロが徹底解説 切り抜き樹木・植栽とその合成方法
チェックポイント
□参考資料を参照しながら進行すること
□出来るだけ3DCGで作業を行うと品質のばらつきがなくなる
9. 建築パースの作り方・書き方 まとめ
以上が建築パースの作り方まとめである。
今回紹介した項目順に進行していくのが一番効率的である。
項目ごとにポイントも書いてあるので参考にしていただきたい。
建築パースに限らず、造形という行為には目標と参照の設定がとても大事である。
自分の能力を過信して横着するべきでない一番のポイントであることを忘れないでほしい。
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