建築パース初心者からスキルアップするためのポイント10選

建築CGを学び始め、なんとかパースがつくれるようになったが、もっと上手くなるにはどうしたらよいのかと悩んでる方も多いだろう。写真・デッサン・建築・3DCGの要素それぞれを理解し、総合的に組み立てる分野なのに情報が少なく困ってしまうはずだ。

日々建築CGパースを制作する立場として、パース制作習得中であろう方々の作品を見ていると、「こうしたほうがよいのに・・」と思う点がいくつか見つかる。今回はそれらをまとめて紹介していく。

建築パース制作を学び始めた方が、そのスキルを効果的に向上できるためのポイントとして10こにまとめている。
ある程度の経験がある方にも、新しい気づきがあるかもしれない。一読していただきたい。

目次

1. 参考になる資料を用意する

たとえば「ドラえもんを書いてください」とのお題に、なにも見ずに上手く書ける人はどのくらいいるだろうか。人の認識は漠然としており、イメージをいざ形にしようとするとたいていうまくいかない。もしもうまくドラえもんが描ける人は、以前に何度か書く練習をしているはずだ。これが初心者にはない経験であり、この経験を重ねて質が高まる。まずはドラえもんの資料を集め、それを見ながら模写することで経験を積む。

建築CG制作も同じである。
自分の理想に近い資料を探し、それを目標に進行しながら、同等かそれ以上のクオリティを目指しながら制作を行おう。

以下で参考写真を集める際に利用できるサイトを紹介する。

1-1. Pinterest

写真、デザインやインテリアの質の高い投稿が豊富にそろっている。
自分の好きな画像をコルクボードにピン止めするイメージで収集することができ、後で見返すことができるので使い勝手がよい。

Pinterest(ピンタレスト)

1-2. Behance

Adobeが運営するクリエイター向けに設計されたSNS。海外デザイナー中心で、Pinterestに比べより洗練されている印象。プロダクトやロゴなど含めた多岐にわたるデザイン資料を探すことができる。

Behance(ビハンス)

1-3. cgarchitect

建築のヴィジュアライゼーションに特化した海外SNSサイト。最新の建築CGパースが見れる。その他、建築ビジュアライゼーションの情報や素材など、参考になるコンテンツがある。

cgarchitect(シージーアーキテクト)


2. 白100%黒0%は使わない

PBRマテリアルが主流になり神経質にならなくてよくなったが、白100%や黒0%をカラーテクスチャとして設定するのは避けたほうがよい。特殊な物を除き、現実世界で 白100%・黒0% の色を持った物体は存在しないからだ。

このようなカラーを設定してしまうと白の場合はハレーション、黒の場合はディテールがつぶれてしまいオブジェクトの詳細が認識できなくなってしまう。白は80~90%、黒は5~15%程度の範囲で設定しておくのが無難である

HSVパラメーターの場合、V10%~90%の範囲で配色するのがよい

3. スケールに注意する

CADベースで設計された建物等を制作する際は、スケールがおかしくなることはないだろう。
しかしタイル等のマテリアルの大きさや、最終レタッチで写真合成する人物など、大きさがあきらかにおかしいものをよく見かける。

スケールの違和感は、品質に大きく影響を及ぼすので細心の注意が必要だ。

3DCGにて人物の大きさをあらかじめ把握しておき、写真合成を行うのが望ましい。
以下で、Cinema4Dによる人物合成のやりかたを解説していく。

ウィンドウ上部にある立方体タブを長押しで出るパレットに「フィギュア」という項目があるのでクリック。
レイヤーにフィギュアが追加され、属性パレットに設定項目が出てくるので、一般的な身長170cmに設定する。

合成しようと想定している場所に配置し、頭と足の位置を確認しておこう。
その際、フィギュアに当たる太陽光と落とす影の方向もチェックしておくのが重要だ。

Cinema4D上で確認した大きさを基準に写真を配置することで、違和感なく合成を行うことができる。


4. アングルの決定は論理的に行う

カメラによる構図はとても重要な要素である。写真撮影における基本を考慮しながら、構図の取り方は論理的に行うべきだ。
注意すべき初歩的な点を解説する。

4-1. あおり補正

通常レンズを用いて建物を見上げるように撮影すると、建物上部がすぼまって写ってしまう。建物は地面に対して垂直に建っているので、違和感を感じてしまう。静止画制作の場合、ほとんどの3DCGソフトにはこの現象を補正してくれる機能を備えているはずだ。
安定感のある建物の表現には必須の機能である。

4-2. 適切な焦点距離を選択する

広範囲を表現したく、超広角の設定を行ってパースが効きすぎているものを見かける。一度に多くを見せる目的以外、どうしても不自然に見えてしまうので避けたほうが無難な設定である。

人間の目の視界にもっとも近いとされている焦点距離は40〜50mmと言われている。弊社では焦点距離36mm~50mm程度の範囲で決定することが多い。これらの値から離れると、非現実的な画像が作成されやすくなるので注意が必要である。焦点距離による見え方の違いは下の画像を参考に。

4-3. 3分割法の利用

写真撮影でよく知られているルールであり非常に便利であるため、弊社ではよく多用する。

9つのゾーンに画像を分割して見ると、目は真ん中ではなくこれら4つのポイントの1つ
特に左上のポイントに焦点を合わせる。

それらのポイントに被写体を配置すると全体のバランスが取れたアングルになる。
その他、黄金分割やフィボナッチ螺旋など、美しいと感じる構図にはルールが存在する。


5. 色相環(しきそうかん)を意識した配色を行う

色相環とは有彩色の純色で12に分類された色配列のことで、色を選ぶ際に指針となるものである。
シーンの配色には色相環による類似色におさまる範囲にて行うとよい。統一感やまとまりのあるパースが制作できるだろう。

補色という関係性もあるが、高度なセンスを要する為、避けたほうが無難である。


6. レンダーエレメントを利用する

3DCGのシーンにおける効果を、レンダリングした後に写真編集ソフトでも調整できるよう画像化したものをレンダーエレメントと呼ぶ。例えば、もう少しここを明るくとかここの映り込みを強くといった調整をレンダリングせずに行うことができる。

3DCGソフトでの調整を行うよりも、2Dツールで感覚的に画作りを行うほうがよい結果が生まれやすい。

実際にレンダーエレメントを利用したレタッチ方法を解説した記事があるので参考にしていただきたい。
関連記事>【Photoshop】レンダーエレメントでポストプロダクション【建築パース】


7. 陰影がつくように意識しよう

建物やインテリアをモデリングしてライティングを行う際、光の当て方によって陰影を生み出すことを意識して行おう。外観における四角い建物に太陽光を設定すると、光のあたっている面は明るく、あたっていない面は暗くなるため立体感が生まれる。この明暗の陰影をできるだけ強くするとコントラストが生まれメリハリの利いた描写が可能となる。


8. アンビエントには期待しすぎない

PBRレンダリングが主流となった今、アンビエントオクルージョンについてはあまり利用する利点がないかもしれない。適切な使い方を行わず、汚れに見えてしまうレンダリングをよく見かける。

利用する場合はレンダーエレメントとして書き出し、描画モードを工夫することで対応しよう。

左の画像はアンビエントレイヤーを直接ブレンドしたもの。右側はひと手間加えて乗算したもの。
下記の記事にて設定方法を解説している。参考にしていただきたい。

関連記事>インテリアパースのポストプロダクションを解説


9. 高すぎる彩度は難しいので抑えよう

テクスチャの調整や植物の緑色は、出来るだけ彩度を抑えた設定にするとよい結果になりやすい。
白黒写真のように、色彩が薄まることで抽象性が増し、ストーリへの求心が高まるためだ。比較的容易に、目を惹きつける描写を可能にする。

もちろん、青青しい緑の表現や澄み渡った空色などが必要な場合もあるだろうが、バランスを見ながら調和を試みなければならないので求められるスキルは高い。

画像の彩度を下げることで安定感が生まれる。

10. 基本的な建築・内装知識を身につけよう

当然のことではあるが、建築的な知識は必須である。基本的な納まりやディテールは把握しておかなければならない。

提供していただく建築図面は、縮尺されて図示されたものであり、必要以上な情報は基本描かれていない。
しかしながら、建築CGは現実世界に計画が投影されたイメージを描写するものである。図面には表れてこない情報は汲み取り表現しなければならないのである。

設計者の意図を理解し、建物の魅力を表現するには、高い建築知識が必須となる。


11. まとめ

以上が「建築パース初心者からスキルアップするためのこと10選」である。

改めてまとめると
1. 参考になる資料を用意する
2. 白100%黒0%は使わない
3. スケールに注意する
4. アングルの決定は論理的に行う
5. 色相環(しきそうかん)を意識した配色を行う
6. レンダーエレメントを利用する
7. 陰影がつくように意識しよう
8. アンビエントには期待しすぎない
9. 高すぎる彩度は難しいので抑えよう
10. 基本的な建築・内装知識を身につけよう
となる

これらのことを意識しながら制作にのぞめば、効率的にスキルを向上することができるだろう。
すべてセンスを要するものではなく、論理的にアプローチできるものばかりである。

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